こども社長の魔法のブログ

(株)ケイピーエス代表取締役角田恭平による音楽・ライブハウス・人生の読み物

ライブハウスが1ドリンク制である3つの理由

「チケット代と別途ドリンク代ご用意下さい〜。」

「チケット代とドリンク代、あわせて2600円になります。」

このようなセリフをライブハウスの入り口で聞いた事ある方も多いのはないでしょうか?

あれ?チケット代だけじゃなくてドリンク代もいるの?と思った人もいるかもしれません。

 

この記事を書いている恭平 a.k.a こども社長( @kyoopees )は京都でGROWLYというライブハウスを経営しています。

GROWLYでは2018年1月1日から入場時のドリンク代を500円から600円に値上げしました。

(GROWLYでは600円でドリンクチケットを2枚お渡ししています。ソフトドリンクなら1枚必要、アルコールなら2枚必要というシステムを採用しています。)

 

この"こども社長の魔法のブログ"を始めたのも、そのドリンク代の値上げのお知らせを書いたのがきっかけです。

 

ライブハウスに初めて来た時は、

「なんでチケット代と別にドリンク代が必要なの?」

って疑問に思った人も少なくないと思います。

 

ライブハウスに慣れてる人も、ドリンク代がかかる事は理解してても、

何故1ドリンク制が必要であるかまでは知らないのではないでしょうか。

 

全国の90%のライブハウスが採用してると思われる1ドリンク制

実は、小規模なライブハウスはほとんどの場合で1ドリンク制が必須ですが、大規模なホール等では必須ではない場合があります。

知ってましたか?

これには営業許可申請が関係してくるんです。

 

入場時の1ドリンク代は500円が相場でしたが、近年は消費税・酒税の増税に伴い、600円にするライブハウスも増えて来ています。

 

ということで今回は、

なぜライブハウスが1ドリンク制度を採用しているか

ということについて3つの理由を挙げて説明していきたいと思います!

 

[2019.1.16追記]

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レディゴォ!

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ライブハウスが1ドリンク制である3つの理由

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なぜライブハウスでは、入場時に別途ドリンク代が必要なのでしょうか。

 

理由はいくつかあるのですが、その中でも代表的な3つは

  • ライブハウスが飲食店であるから
  • バーカウンターを設置・維持しなければいけないから
  • 売上を確保するため 

です。

 

順に詳しく説明していきます。

 

1.ライブハウスが飲食店であるから

まず最初に説明する理由は、

ライブハウスが飲食店であるから

です。

 

ライブハウスが飲食店?

ご飯食べれる所なんて無いじゃん!

と疑問に思う方もいるかもしれませんが、

ライブハウスが飲食店であると言い切れるのには理由があります。

 

飲食店営業許可を取っている

キャパシティ(収容可能人数)が300人以下のライブハウスのほとんどが、飲食店営業許可を取って営業しています。

飲食店営業許可を取っている = 飲食店

なのです。

 

ライブハウスによってはフードも1オーダー必須の所もあります。

しかし音楽のジャンルやライブハウスのスペースによってはテーブルに座ってフードを食べながらライブを見るというのが難しい所もあります。

なので、立ちながらでも飲めるドリンクのみを提供するライブハウスは多いです。

 

飲食店営業である以上は、飲食物を提供しなければなりません。

ライブハウスとしては、ドリンクを販売したいところです。

しかし、日本人はあまりお酒を飲みません。

 

元々ロックという文化は西洋から入って来たものだと思いますが、

外国人と比べると日本人は体質的にお酒が弱い傾向にあります。

そこで考えられたシステムが、1ドリンク制です。

 

通常の飲食店に入った時に、

「お一人さま1オーダーをお願いしています。」

と言われた事は無いでしょうか?

飲食店に入ったは良いけど、何も注文せずに席を利用する事はマナー違反です。

 

ライブハウスでは一人一人にお声がけをするのが難しい場合があります。

100人入って人全員に「1オーダーお願いします。」って言って回れないですよね。

なので1ドリンク制を採用する事で、入り口で1ドリンク代を徴収して、強制的に1オーダーを成立させているのです。

 

この制度を導入する事により、ライブハウスに来た人全員にドリンクを提供することができるので、飲食店営業として続ける事ができます。

 

規模の小さいライブハウスが営業する為の方法

ではなぜライブハウスは飲食店の営業許可証を取っているのでしょうか。

 

それは、「規模の小さいライブハウスが営業許可を取る為の一番簡単な方法」だからです。

 

ライブハウスを経営する場合、事業者は「飲食店営業許可」か「興行場の許可」のどちらかを取らなければいけません。

この2つを比べたとき、ライブハウスの営業に必要な設備を揃えた上でより簡単に取得できるのは、飲食店営業許可です。

 

ちなみに興行場の許可は映画館や劇場、歌舞伎座などを開業する時に申請します。

こちらは飲食店営業許可と比べると取得のハードルが高いです。

小規模なライブハウスを経営する上では必要以上の設備投資をしなければいけないのです。

 

そういう理由で、飲食店営業許可を取って営業しているライブハウスが多いです。

 

もちろん興行場の許可でもライブハウスは営業可能です。

大規模なコンサートホール等は興行場の許可を取っている場合があります。

なのでコンサートホールでは、1ドリンク代が必要ではないケースもあります。

 

風営法改正によりライブハウスは飲食店であると位置づけられた

ちょっと前ですが、「NOON裁判」で風営法が話題となったのはご存知でしょうか。

風俗営業許可を取得せずに営業していたナイトクラブが軒並み摘発されました。

ライブハウスとクラブを明確に分ける区分は今までなかったため、

ライブハウスも摘発の対象になるのでは?とライブハウス業界がざわざわした時期があります。

 

そんな中、2016年6月に風営法が改正されました。

風営法が改正された時に新設された区分が「特定遊興飲食店営業」です。

簡単に言うと、「深夜0時以降見せ物等で客寄せして飲食をさせる営業」は特定遊興飲食店営業の許可を申請する事が必要になりました。

大抵のクラブは深夜0時以降も営業しているので、特定遊興飲食店営業の許可が必要となります。

 

しかし、これでクラブが風俗営業から外れたのは大きいです。

今までより簡単に許可が取得出来る様になったのと、朝まで営業ができるようになりました。

クラブ文化が守られるための素晴らしい前進です。

※許可が取れる地域等が限られているので、誰でもどこでも取れるという訳ではないです。

 

そしてこの風営法改正により、今までは曖昧だったライブハウスとクラブに明確な境界線が引かれました。

見せ物等で客寄せする場合でも、深夜0時までに営業終了する店舗は飲食店営業許可のみで良い

ということになり、「ライブハウスは飲食店」ということがより明確になりました。

 

詳しくは、こちらのリンクを読んでもらった方が良いかと思います。

興味がある方は読んでみて下さい。

風営法改正によってライブハウスが風俗営業になるというのは本当か?(2)

ライブハウス、法律上は「飲食店」 1ドリンク制をめぐる誤解を弁護士が斬る - 弁護士ドットコム

 

2.バーカウンターを設置・維持しなければいけないから

次に説明する理由は、

バーカウンターを設置・維持しなければいけないから

です。

 

1の理由からの繋がり的な所はありますが、これも詳しく説明します。

 

飲食店営業許可を取る為にバーカウンター設置は必須条件

厳密に言うとバーカウンターが絶対必要というわけではなく、

飲食店営業許可を取る為の必要条件を一番簡単に満たすのがバーカウンター

という表現が正しいかと思います。

 

もちろん飲食店営業許可を取る為には様々な要項があるのですが、その中の一つに

調理場と客席エリアは区切られてなければならない

というものがあります。

お客さんが簡単に調理場に入って来れるようであれば、衛生的にも管理的にも良くないのは、一目瞭然ですね。

 

調理場と客席エリアを区切り、しかも飲み物を置くテーブルになる。

そんな画期的なものがバーカウンターです。

 

バー機能を維持しなければいけない

一番簡単に設置出来るとは言ったものの、もちろんタダではありません。

シンクが必要だったり冷蔵庫が必要だったり、ドリンクを作るスタッフの給料も必要です。

バーカウンターを作るにも維持するのにもお金がかかるものです。

 

先述した様に、日本人はあまりお酒を飲みません。

バーカウンターを設置したのは良いけど、誰も飲んでくれないから維持出来ない。

それを1ドリンク制は解決してくれます。

飲食店営業許可を維持する為だけでなく、バーカウンター等の設備を維持する為にも、1ドリンク制は一役買っているというわけです。

  

3.売上を確保するため

3つめに説明する理由は、純粋に

売上を確保するため

です。

 

これも2の理由と繋がると言えば繋がるのですが、詳しく説明していきましょう。

 

チケット代で確保出来なかった部分を補う

ライブハウスの収益の大きい部分を占めるのが、チケット代(ハコ代)です。

観客が入場時に払うチケット代はもちろんのこと、ホールレンタル(貸切り)する場合はホールレンタル代、そして度々話題になるチケットノルマ等です。

 

しかしこれが全ての営業できっちり回収出来るとは限りません。

思った様に出演アーティストが決まらない日もあるし、

気合い入れて宣伝してもお客さんが入らない日だってあるし、

地震や台風の影響で急に中止になる日だってある。

 

そんな時にドリンク売上があれば、足りない売上を補填してくれます。

 

ライブハウスの設備投資・維持費というものはものすごく高いです。

例えば電気代は、僕の部屋の約100倍かかってます。(リアルに)

経費に関してはまた別の記事で詳しく説明したいと思っています。

 

ドリンク代だけで全ての経費を賄う事は難しいですが、1ドリンク制があるおかげでライブハウスを維持しやすくなっているのは事実です。

 

更なる設備投資への資金となる

ドリンク代で収益を確保出来れば、更なる設備投資への資金とする事ができます。

現状維持する為に機材の修理や交換でもお金がかかりますが、今使ってる機材をランクアップさせる為の資金に回す事が出来れば、より良い環境を作る事ができます。

 

音響・照明機材だけではなく、例えばトイレにウォシュレットを付けたり、分煙する為の機械を購入したり、バーカウンターを派手にする照明機具を導入したり、、

より居心地の良い空間を作る為にも、1ドリンク制は必須だと考えます。

 

アーティストへの還元を増やす

売上を確保すると書くとちょっとやらしい印象もあるかもしれませんが、

それは巡り巡って出演アーティストへの還元にもなります。

 

ドリンク代で売上を確保出来れば、チャージバック(ギャラ)を増やす事が出来るし、もし集客が足りなかった場合も支払いを減らす事ができます。

(ドリンク販売がもし無かった場合、支払いがもっと増えると言う意味です。)

上述した様に設備投資はオーディエンスの為でもありますが、より良い環境で自分たちの音楽を表現出来るように環境を整える事は、アーティストへの還元でもあります。

 

ライブハウスを続けるのは、もちろんアーティストがより良い環境でライブが出来る為であるので、全てはここに繋がって来ると言っても過言ではありません。

 

まとめ

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今回はライブハウスが1ドリンク制である理由を3つ挙げましたが、他にも理由はたくさんあります。

例えば、お酒を飲みながら大音量で音楽を聴くと、音楽を楽しみやすくなったりする効果もあります。(個人差があります。)

 

ライブハウスを始める為にも続ける為にも、1ドリンク制は必須だと考えています。

(1ドリンク600円でコーラ1杯は高いなぁ。と思っていたので、GROWLYでは600円でソフトドリンク2杯飲める制度を導入しています。)

 

僕はこの会社を立ち上げた時に、音楽業界でも他の業界と比べても遜色ないような会社にしていく!という決意をしました。

「音楽業界は食えない」という話を良く耳にして悔しかったからです。

 

会社設立してもうすぐ7年になろうとしていますが、もちろんそれは難しいことを実感しています。

実際に音楽業界が他の業界同様に成立するのは難しいと感じています。

ここで諦めるのは簡単です。

諦めずに続けていく為に、色んな事を考えながら日々実行しています。

 

 

今後も、より良い環境を整えて維持することが、バンドのため、お客さんのため、会社のため、京都の音楽シーンのため、日本の音楽シーンのため、社会のためだと思っていますので、頑張っていきたいと思っております。

これからもよろしくお願いします。

 

[2019.1.16追記]

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関連記事です。

ライブハウスがそこに在り続けること、それが大切な事だと考えています。 

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1ドリンク制度はライブハウスの常識と言えますが、音がデカイのも常識です。

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2016年に風営法が改正されましたが、2020年には健康増進法が改正され、屋内は原則禁煙となる様です。

こちらも、法改正前に対応に追われる飲食店は多そうです。

www.kyoopees.net

 

続きはWebで。もしくは現場で。