ライブハウスは自由なところ!はもう昔の話?
制限なんて無視してライブやっちゃダメなの?
コロナ禍になり、もう1年半が経とうとしています。
2021年9月現在、全国で緊急事態宣言が延長され、収束の兆しはまだまだ見えません。
この記事を書いている恭平 a.k.a こども社長( @kyoopees )京都でライブハウスGROWLYやスタジオAntonio、他にも飲食店などを経営する会社の代表を務めております。
ライブハウスはコロナ禍を乗り越えるべく、さまざまな対策/制限をして、ライブイベントを開催しています。
そこで今回は、コロナ禍におけるライブハウスの制限まとめとして、僕が把握してる範囲での制限をまとめようと思います。
(制限以外にも色々な"対策"がなされてますが、今回は"制限"のみをまとめた記事になります)
もちろんライブハウスによっては、制限が緩かったり、もっと制限してるライブハウスも多いと思いますので、あくまで僕目線でのまとめになります。
この期間にライブハウスに来始めた人は、これが普通と感じるかもしれません。
が、これは完全に異常です。
どれだけのことが制限されているか、読んでみて知ってください!
コロナ禍におけるライブハウスの制限まとめ
再三になりますが、あくまで僕目線によるまとめです。
この制限をやってないからダメ、とかいうつもりは全くありません。
ライブハウスそれぞれで考え方やシェアが違って当然ですからね。
キャパ制限(ソーシャルディスタンス)
まずはキャパ制限(入場数客数制限)です。
緊急事態宣言期間でなくても、コロナが騒がれた2020年4月ごろから、キャパ制限を取り入れるライブハウスが多くなりました。
きっかけは、音楽業界団体3団体(当時は4団体でした)が作成したライブハウスのガイドライン(正式名称:ライブハウス・ライブホールにおける新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン)による影響が大きいでしょう。
これによると、
従前の収容人数の50%程度にて公演を開催するよう要請してください
とあります。
ですので従前(コロナ前)の収容人数(キャパ)の50%制限を設けているライブハウスが多いです。
しかし、いわゆる「キャパ」というものはあくまでライブハウスが独自に決めたものです。
オールスタンディングのライブハウスのほとんどが、キャパ50%まで入れたとしたらかなり「密」を感じるでしょう。
しかしこのガイドラインを作成した日本音楽会場協会の代表の阿部さんとは何度もYouTubeで対談させてもらい、ライブハウス判断でのキャパ50%で問題ないというお墨付きをいただきました。
興味がある方は対談動画もご覧ください↓
"ライブハウスのガイドラインを策定した日本音楽会場協会って何なの?代表者を直撃してきた"
正直な話、このガイドラインが出された当初は、
「なんで得体の知れない団体が勝手に作ったガイドラインを守らなきゃいけないんだ」
と憤りを感じましたが、やはり有名バンドがコロナ期間にツアーで使ってくれる際に、このガイドラインを目安にチケット売り枚数を考えたりしたので、作っていただいたことは大切なことだったんだなと思いました。
キャパ制限は、このあと出てくる「盛り上がり制限」にも繋がる制限です。
今回は"制限まとめ"なので省略しましたが、検温や追跡アプリの登録など、入場時の作業も増えました。
そのため、コロナ前より入場にも時間がかかります。
今まで倍以上のお客さんを入れていたと考えると、すごい変化だなぁとしみじみ思います。
盛り上がり制限
ライブハウスの醍醐味といえば、盛り上がること。
モッシュ、ダイブ、シンガロング、マイクジャック、、
コロナ禍ではそれらの盛り上がり方も大きく制限されています。
(なんか文章でわざわざ書くと変な感じになりますが。笑)
GROWLYではさらに、出演するバンドに「ステージから降りてのパフォーマンスは、コロナ期間はNG」をお願いしています。
ボーカルはマスクをしてないので、飛沫が飛ぶリスクが高いです。
ステージからの距離を2m取っているので、それを守って欲しい、と言うことです。
もちろんジャンルによりますが、盛り上がり方が制限されてしまうと、ライブの面白さが半減してしまいます。
特に激しいジャンルのバンドは、その盛り上がりを制限されてしまうと、なんだか白けてしまいます。
なのでコロナ禍になった当時はそれらの盛り上がり方をするバンドは、ライブ自体を自粛したりしていました。
しかしコロナが長引きすぎて、痺れを切らしてライブ活動を再開してるバンドが多いです。
これは本当に難しい問題です。
しかしながらこの制限に従いながらでも、ライブをやった方がいいと僕は思います。
いつまでも自粛していても埒があかないですからね。
そういえば先日、あるイベントでのモッシュダイブ動画が流出し、ライブを行っていたバンドが批判にさらされました。
もちろん自粛派や制限を守ってる人からしたら、こんな時代にけしからん!と言う意見が出てまっとうでしょう。
しかし個人的には「そもそもライブハウスはアンダーグラウンドな場所で、そこにいる人たちの暗黙の了解の上で成り立っている」と考えています。
問題はもっと別の場所にあるような気がしています。
(決してこの時期にモッシュダイブを容認しているわけではありません)
時間制限
これに関してはコロナ禍というよりは緊急事態宣言/蔓延防止等重点措置(通称マンボウ)/自治体から独自の要請などで、営業時間に時短要請があった場合のみです。
コロナ禍になってから時短や休業の要請がありましたが、去年の年末くらいまでは時短の制限が徐々に解かれていました。
しかし去年の年末から今年に入って今に至るまで、京都市ではほとんどの期間で時短要請が出ています。
21時ならまだしも、20時は正直きついです。
土日ならまだなんとかオープンスタートを早くすることで成り立ちますが、平日の20時閉店は本当にきついです。
今までなら「仕事が終わり次第向かうので20時からならリハ無しで出れます」みたいなバンドを、2バンドまでなら受け入れることが余裕でしたが、今はそれが無理です。
そして土日ならまだしも平日に16時スタートとかは本当に出演バンドに申し訳ないです。
僕の感覚では、17時定時で仕事や学校が終わるとするなら、17:30スタートならギリギリ間に合うと思ってます。
もちろん17時に終わらないとか、場所によっては17:30に間に合わない、などの人もいるかもしれませんが、一定の区切りを設けるなら17:30が最も早いスタートだと考えていました。
しかし20時閉店は、通常の22時閉店より2時間も早く終わらなければいけません。
そのため2時間もスタート時間を早くしなければいけないという、かなり厳しい制限の中、イベントを開催しているのが現状です。
バンド数制限
前述の時間制限と関わってくるのですが、時間が制限されるとその分バンド数を多く組むことが難しくなってきます。
平日に16時スタートとかにならないように、時短要請がどうなるかわからない2〜3ヶ月後のイベントでも、平日はバンド数を少なめに組むなどの調整したりしています。
しかしやはりバンド数を少なくすると(もちろん出演バンドの知名度や集客力によりますが)その分、集客や売り上げにも響いてきます。
バンド数を多くして成り立たせていたライブハウスにとってはこれも厳しい制限です。
また、時間制限だけでなく単純にバンド数を多くしにくい理由は、その分出演者の人数が多くなるからです。
ガイドライン的には出演者数に制限はないのですが、やはりこのご時世楽屋が密になることは避けたいし、バンド数が多いとそれだけお客さんも増えやすいのですが、集客制限がかかってる以上、集客の把握が難しいのです。
例えばバンド数が多いので今回の集客制限は50人にしよう、としたとします。
その場合あるバンドの時は50人お客さんがいたが、別のバンドの時はみんな帰ってしまってガラガラだった、となってしまいます。
この問題はもちろんコロナ前からあったのですが、集客制限により「そのイベント」自体の上限が下がってしまえば、よりその現象は起きやすくなります。
GROWLYは2階にスタジオAntonioが併設されているので、コロナ前はライブハウスとスタジオを使ったサーキットイベントや、GROWLYのフロアにもセットを置いての2ステージイベントなど、京都のライブハウスの中ではバンド数を多くしやすい方のライブハウスです。
しかしそういった出演バンド数が多く出るお祭りイベントも、この期間は開催できていません。
酒類販売制限
こちらも時間制限同様、緊急事態宣言/蔓延防止等重点措置(通称マンボウ)/自治体から独自の要請などで要請があった場合にはなります。
しかしお酒が売れないということは、こんなにもライブハウスにダメージを与えるのかと実感しています。
まずはなんといっても売り上げに大打撃です。
GROWLYは特に、お酒が安いを売りにしているライブハウスです。
(もっと安い居酒屋などはありますが、ライブハウスの中では、という感じです)
イベントの内容にもよりますが、多くの人がお酒を楽しんでくれていました。
なので箱代売り上げは低くてもドリンク売り上げが多くてなんとなかったみたいな日は多かったです。
そのドリンク売り上げの大半を占める酒類の販売が取り上げられてしまうと、当然売上は厳しいです。
あとやはり、イベントの雰囲気や盛り上がりも左右されます。
もちろんこの時期はお酒が飲めたとしても先述のように盛り上がりが制限されていますが、やはりお酒が入ってるのと入ってないのでは、音楽の楽しみに差が出ます。
もちろん個人差があります。
お酒がない方が楽しめる人も大勢います。
しかしお酒があった方が楽しめる人も多くいるのは事実で、楽しさを半減させてしまっています。
そしてこの制限で新たな問題も浮上しています。
GROWLYでは元々、住宅地にある関係上、再入場を原則不可にしてきました。
しかしコロナ禍では換気などの観点から、再入場もありにしています。
そうなると、ライブハウスでお酒が買えないので、お酒が飲みたいお客さんはコンビニにお酒を買いに行きます。
そこまでは制限することができません。
そしてお酒の持ち込みはもちろん禁止してるので、入るまでに飲み干します。
(酒類の持ち込みは、コロナ前もコロナ禍でも禁止しております。)
そうなると、コンビニやライブハウス前に、缶ビールや缶チューハイを持ったライブハウスのお客さんがたむろすることになります。
そして空き缶をその辺に捨てる人もいます。
これは本当に良くないです。
売上はコンビニに持っていかれ、ライブハウスのイメージも悪くなる。
しかしそれを制限するのも難しい。
これを読んだ皆さん、心当たりあれば、コンビニで酒買うなとまでは言いません。
しかし最低限、ポイ捨てはやめてください。
そしてそのせいでライブハウスのイメージを下げるような行動は謹んでもらえると助かります。
酒類販売制限の救世主となるか
2021年9月より、GROWLYでBEERY(ビアリー)という商品を取り扱い始めました。(ステマじゃないです笑)
この商品はアルコール度数0.5%の、"微アル"というジャンルになります。
こちらなんと、ビールテイスト飲料(炭酸飲料)という扱いになり、この緊急事態宣言かでも提供OKだそうです。
アルコール度数1%以下は酒類にはならずノンアルコールビールと同じ扱いです。
※ただし、未成年への販売はできず、飲んだ場合は運転もできません。
酒屋から聞いた時は半信半疑でしたが、実際に京都市へ問い合わせたところ、提供可能という回答をいただきました。
実際飲んでみたんですが、ノンアルコールビールより全然美味しいです。
なんでも、「一度ビールを醸造してからアルコール分を抜く」という製法で造られてるらしいです。
なのでビールの味に近いです。
0.5%なのでほとんど酔いませんし、このご時世のために生まれてきたような商品です。
GROWLYに来た際は是非試してみてください。
打ち上げ制限
そしてこれはお客さんには関係ないですが、この期間は打ち上げもやることができません。
GROWLYでは食事を出せるので、ご飯を食べながら打ち上げするのがもはや恒例となっていました。
打ち上げ飯が美味いという噂も流れていたようです。
嬉しい話です。
しかしこの期間はできません。
個人的に打ち上げは、イベントによってはとても大事だと思っています。
といっても僕はお酒を飲みまくるような打ち上げは好きではありません。
対バン同士、交流を持って欲しいのです。
特にバンド結成したてのバンドが多く出るGROWLYでは、バンド同士の交流を大切にしたいと考えています。
それは、若手バンドのライブ出演における重要な部分だと思っています。
詳しくはこちらの記事で解説しています↓
交流をするための打ち上げが制限され、ただライブ30分して帰ることほど、若手バンドにとって勿体無いことはないです。
早く要請が解かれ、打ち上げができる世の中に戻って欲しいと思います。
まとめ
というわけで今回はコロナ禍におけるライブハウスの制限まとめという記事でした。
今回この記事を書いてみて、改めて「これだけ多くの制限がされているんだな」と思いました。
冒頭に書いたように、全てのライブハウスがこれらの制限をしているわけではありません。
ライブハウスそれぞれ、独自の判断です。
ライブハウスはアンダーグラウンドな文化です。
暗黙の了解で成り立ってる部分も多いです。
しかしコロナ禍になり、関わる人間が多いほど、慎重にならざるを得ません。
さまざまな制限のせいで、おもしろくないことは事実です。
僕も正直、昔より面白いことができなくてモヤモヤしています。
しかしそれでも新しいバンドは生まれてきています。
ライブハウスでイベントをやりたいという若い子も出てきています。
今は制限が多く、大変申し訳なく思いますが、それでも炎を絶やさないように、続けていきたいと思っています。
「制限が普通」ではなく「制限が異常」という心は忘れずに持っていたいと思ってます。
コロナが明けて、「あの頃はおかしかったね」と、笑えるように。
関連記事です。
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2年前に書いた初心者バンドマン向けの記事。コロナで変わった部分もあるかもしれません。
コロナは自然災害。誰の責任か?
続きはライブハウスで。