こども社長の魔法のブログ

(株)ケイピーエス代表取締役角田恭平による音楽・ライブハウス・人生の読み物

アーティストは集客努力をするべきか

「魅力のあるアーティストには勝手にお客さんが集まるから、集客努力をするアーティストはダサい!」

 

おそらく、 集客努力を(敢えて)やらないアーティストの大半が口を揃えていうセリフだと思います。

果たして本当にそうでしょうか?

 

先日、的野祥子さん( @matono_syoko )のツイートが話題となりました。

福岡のライブハウスシーンが3年前と比べてノルマ制からチャージバック制に変わっていることを受け、"チャージバック制=集客努力をしなくてもいい"ということではないということを書かれたツイートです。

 

この記事を書いている恭平 a.k.a こども社長( @kyoopees )も京都でGROWLYというライブハウスを経営しているので、食い入るように読んでしましいました。

(的野さんはシンガーソングライターで、GROWLYはバンドが多く出演するライブハウスなので、ちょっとだけ価値観・金銭感覚のズレはあるかもしれませんが。)

 

的野さんの福岡時代の話も含めて、大変共感できる内容でした。

今回はこのツイートをきっかけに、"アーティストは集客努力をするべきか"という題材で記事を書こうと思います。

(私の個人的意見であり、的野さんの意見を代弁する記事ではありません。)

 

集客に悩んでるアーティスト、

これからのアーティストを応援しているファン、

そしてライブハウスに足を運ぶ全ての人に読んでほしい記事です。

 

レディゴォ!

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アーティストは集客努力をするべきか

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個人的には、「ライブ活動をやる」かつ「集客努力が不必要なラインをクリアしてない」アーティストは、集客努力をするべきと考えています。

 

ライブ活動をしない、もしくは集客しなくてもお客さんが集まるのであれば必要ありません。

 

ライブ活動をするのであれば、少なくともそのラインをクリアするまでは集客努力が必要です。

 

集客努力が不必要なライン=集客予測がハコ代(ノルマ)をクリアしている

ライブを発表した時点でチケットが一定数以上売れるアーティストは、いわゆる集客努力は必要ないかもしれません。

その"一定数"のラインは、"集客予測がハコ代(ノルマ)に足りるかどうか"だと思っています。

 

ハコ代(ホールレンタル代)やノルマはハコによって違うと思います。

なので具体的に◯人という人数ではなく、そのライブをする場所によってラインは違います。

 

ノルマ制とチャージバック制についてはまた別の記事で触れたいと思っていますが、チャージバック制の問題を一点だけ指摘するなら、「ハードルが設定されてないこと」だと思います。

 

ハードルが設定されているチャージバック制であれば、そのハードルを超えられるかどうかがラインとなります。

もしハードルが設定されてなく、「何人でもいいよ」というのであれば、0人でも(ライブハウス側は)問題ないですよね。

全出演、全公演が本当に0人でいいライブハウスがあるのであれば、経営の仕方を教えてほしいです。(おそらく、ライブハウス以外の収益がかなりあるのでしょう。)

もしお金的な問題がクリアだとしても、お客さん0人のフロアでライブすることほど悲しいことはないですよね。

 

(経営のやり方は色々あると思うので、一概には言えません。ウチは違う!と気分を害された経営者の方いらっしゃいましたらごめんなさい。飲みに行きましょう。)

 

なので、たとえチャージバック制だったとしてもハードルは設定されるべきだし、そのハードルやハコ代・ノルマに達さないと予測される全アーティストは集客努力をするべきです。

 

集客努力とは何を指すか

では、集客努力とは具体的に何を指すのでしょうか。

具体例をまず挙げてみますが、概念的には「ライブに行きたい、応援したいと思わせるような活動」のことを指すと考えています。

 

集客努力の具体例

集客努力の具体例を挙げてみます。

ここに挙げるのは基本中の基本だと思いますが、基本を知らずに応用はできないとも思います。

 

フライヤー配布・ポスター貼り

直接フライヤー(チラシ)を手渡ししたり、ポスターを貼ってもらうのは、いくらネット社会になったからと言っても大事な集客方法だと思っています。

 

もちろん、100枚フライヤーを配っても1人来てくれたら奇跡くらいの割合です。

しかし、全員が常にSNSにログインし、アナタの告知を見ているわけではありません。

SNSをやってない人も一定数います。

フライヤーを受け取って初めてそのイベントやアーティストを知るという人も少なからずいます。

 

そしてもしそのフライヤーのイベントに行かなかったとしても、100人中10人くらいは、フライヤーを受け取ったことを頭の片隅に記憶してるものです。

 

何もしないよりは、(もし集客ライン達成してないのであれば)やった方がいいと思います。

 

SNSでの告知

2018年では主流と言っていいほど、SNSでの告知は重要になりました。

しかしその反面、誰でも数秒で告知できてしまうので、情報が溢れています。

動画や画像を作成して告知することも、インパクトを強める上では大事です。

 

そして意識してほしいことは、基本的にSNSはその人が「欲しいと思っている情報」のみを選んで得ることに特化していることです。

フォロワーが多ければいいかもしれませんが、少ないうちは豆腐に釘を刺しているようなものです。

まずはその情報を知ってもらうために、自分たちに興味を持ってもらうことが大事です。

 

LINEやDMでのお知らせ

以前、「TwitterのDMで集客することがダサい」という主旨のツイートが炎上したことがありますが、私はDMで集客することも重要な集客方法だと思っています。

 

もちろん毎回のライブを機械のように送りつけてくるとウンザリするかもしれませんが、本当に来て欲しいのであれば直接連絡することは効果的だと思います。

 

3つ例を挙げましたが、あくまで例です。

これをやりなさい、という意味では無いので、参考までに。

 

ライブに行きたい、応援したいと思わせるような活動

ライブに行きたい、応援したいと思わせるためには、努力が必要です。

スタジオでどれだけグルーヴを出して、どれだけいい曲を作っても、ライブの存在を知られなければまずライブに行けませんよね。

 

上記したような具体的な行動も大事ですが、

・魅力のあるイベントを組む(出演する)

・ライブハウスでしか手に入らないグッズを用意する

・ライブハウスで体感することが特別な体験になるようなライブにする

・その日にしか得られない何か(モノでも体験でも)を提供する

などの考え方も大切です。

 

SNSにライブ予定を載せただけでは集客努力とは呼べない

SNSでのライブ告知は重要である、と先述しました。

しかし集客努力が不必要になるラインを満たしていないアーティストが、SNSにライブ情報を載せただけで「自分たちは集客努力をしている」というのは勘違いです。

 

もちろん、全く何もしないよりは遥かに優れています。

しかし、SNSは本当に誰でも使えるツールです。

今時、みんな使っています。

SNSにはライブ情報が溢れています。

SNSに載せただけで集客ラインをクリアできないのであれば、それは集客努力とは呼べません。

 

ブッキングライブをどう捉えるか

集客を考える時に「ブッキングライブをどう捉えるか」ということも同時に考えて欲しいことの一つです。

私はライブハウス側の人間なので敢えて言わせてもらいます。

お客さんをたくさん入れて盛り上げるだけがブッキングライブではない」です。

(もちろんお客さんをたくさん入れて盛り上げることも大事です。)

 

ブッキングライブでは、「自分が繋がりのないアーティストと繋がりを作る」大事な機会ということを忘れてはいけません。

"繋がりを作る"というのは単に"仲良くする"だけを指すのではありません。

もちろん仲良くしたり、時には相手のライブを見て勉強したり、切磋琢磨したり。

そういう仲間を作る大事な機会だと思っています。

 

特に駆け出しのアーティストは、お客さんはおろかアーティスト同士の繋がりも少ないです。

ライブハウスが主催するブッキングライブでは、そういった"横の繋がり"を作ってもらうのも重要なポイントの1つです。

ワンマンイベントしかやらない!と決めているアーティスト以外には、横のつながりは大切なことだからです。

 

むしろ、集客努力よりも横のつながりの方が、オフラインであるライブハウスでは重要なことな気さえします。

 

この記事は集客努力のことを書いた記事ですが、集客!集客!と集客だけのことを考えて出演イベントを決めていくのは、特に駆け出し初期の頃は良くない場合があります。

 

集客と横の繋がりは、バランスを取って両立してほしいと思っています。

 

集客努力とは自分たちの良さを見つけてもらう作業

自分たちが作り出す楽曲やパフォーマンスには、絶対の自信を持ってほしいです。

アーティストしてそれは持つべきです。

 

ゴッホは生きてる間に1枚しか絵が売れなかった、という話があります。

「その時点で評価されてないモノ=価値が無いモノ」と決めつけるのは良くないです。

 

私は、「アーティストはまず評価されるべきモノを作り、そのモノが正しく評価されるように努力していくのが初期のライブ活動で大事なこと」だと考えています。

 

冒頭に書いた、

「魅力のあるアーティストには勝手にお客さんが集まるから、集客努力をするアーティストはダサい!」

という考えがなぜ違うと思うかと言ったら、お客さんが集まらないアーティストは"まだ"魅力に気付いてもらえてないのだから、気付いてもらうように努力すべきだと思っているからです。

 

集客力がない=ダサいという方程式は、必ずしも成り立つものではありません。

そして、"魅力のあるアーティストは勝手にお客さんが集まる"という考え方も、もはや現代的ではないと思います。

 

もしかしたら、集客が伸び悩んでる場合、自分たちの楽曲を見直すことも必要かもしれませんが、"人気が出ないから人気が出るような楽曲に作り変えていく"必要はないと思っています。

(そうやって作曲するのも自由なので、そういうアーティストがいても全然いいと思います!)

 

自分たちの魅力を見つけてもらうために、集客努力は必要です。

 

まとめ

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今回はアーティストが集客努力をすることがいかに必要かを論じました。

ライブハウスの人間である私がこのような意見を書くことで、もっとアーティストが集客努力をしやすい環境になればいいなと思っています。

 

このような意見を書いた時に必ずと言っていいほど出てくる意見が

「ライブハウスも集客努力をすべきだ!」

という意見です。

 

ライブハウスもSNSでの告知やフライヤー・HPなどの情報開示はもちろん大事な仕事です。

しかしライブハウスが最も大事なことは、「アーティストが努力して集客したお客さんの満足度を損なわないこと」だと思っています。

アーティストの魅力を増幅させることがライブハウスの仕事だと考えています。

 

ライブハウスという表現の場を未来にずっと残していくために、アーティストもライブハウスも帯を締め直す時期に来ているのかもしれません。

 

 

関連記事です。

アーティストが努力して集客したお客さんの満足度を損なわないためには、ライブハウススタッフ一人一人の心がけが大事です。

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この記事と対極的な書き方をした記事ですが、言ってることは同じことです。

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自分が育った環境だからこそ、後世に残してほしいです。

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集客努力を考える際にも、チケット代の概念は大事です。

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続きはWebで。もしくは現場で。